囚人とYさん part.1
第一日目
いつからなんだろうか、彼がこの狭い牢獄に閉じこまれたのは。振り返ってみれば、たぶん十年近くだろう。時間的にはずいぶん長い間だが、周りの環境は大きな変わりがなかった。狭くて、絶望感が満ちている監房はそのままだし。冷たい鋼の檻が静かに外の世界を隔絶した。こんな牢獄での生活はそんなに悪くないと思ったのは、鎖が掛けていた時間が長すぎて、魂がもう逃げることを考えられないからかもしれない。思想と活力がどんどん削られたら、拘束されることも慣れたわけだ。時間はただ、無意識の中で急速に流れ行った。彼が振り向いた時、この閉鎖な空間でもうこんなに長くいたことを、初めて気付いた。